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進行前立腺がんの新しい治療薬を開発

金沢大学がん進展制御研究所 髙橋智聡

Kohno S*, Linn P*, Nagatani N, Watanabe Y, Kumar S, Soga T and Takahashi C. Pharmacologically targetable vulnerability in prostate cancer carrying RB1-SUCLA2 deletion.
Oncogene, 39: 5690-5707, 2020. *equally contributed.
https://www.nature.com/articles/s41388-020-1381-6?proof=t


前立腺がんは,胃がんや肺がん,大腸がんなどと並び,男性が罹患するがんの中でも患者数が多く,特に60歳以上の高齢男性の罹患率が高いがんです。比較的に進行が遅い特徴を持つがんですが,転移することがあり,既に他臓器に広がっている場合は「進行前立腺がん」と呼ばれます。進行前立腺がんは,男性ホルモンを抑える薬を投与して治療しますが,このホルモン療法を続けていると2年ほどで効果が出にくくなることもあり(去勢抵抗性),新しい治療法の開発が期待されています。
本研究では,進行前立腺がんにおいて10-30%の割合で発生するRB1遺伝子欠失に付随して起こるSUCLA2遺伝子欠失に注目し,これを標的としてがんの進行を抑制する新しい治療薬を開発しました。およそ3,000個の化合物を調査し,その中でチモキノンと呼ばれる化合物が,SUCLA2遺伝子欠失の進行前立腺がんの治療に効果的であることを明らかにしました。
支援班には分子プロファイリングをお願いし、チモキノンががん細胞や正常細胞に及ぼす影響を多角的に解析していただくとともに、プロテオーム解析の是非を検討していただきました。このことによって、薬剤としてのチモキノンの特性を明らかにすることができました。
RB1遺伝子欠失は,一般にがんの生育のための助けとなりますが,進行前立腺がんのかなりの割合がRB1遺伝子に加えてSUCLA2遺伝子の欠失を抱えてしまうため,そのことがかえって,本症の弱点となることが本研究によって明らかになりました。本研究によって見いだされた治療薬は,今後,進行前立腺がんだけではなく,SUCLA2遺伝子欠失が一定程度の患者において観察されている肝細胞がんなどさまざまながんの新しい治療にもつながることが期待されます。


その他の情報

金沢大学広報(日本語)
https://www.kanazawa-u.ac.jp/rd/85326

金沢大学広報(英語)
https://www.kanazawa-u.ac.jp/latest-research/85141

EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-10/ku-apc100720.php

Nature Portfolio Cancer community
https://cancercommunity.nature.com/posts/targeting-metabolic-vulnerability-in-advanced-prostate-cancer

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