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抗がんペプチド系天然物ヤクアミドBの作用機構解明

東京大学大学院薬学系研究科 伊藤寛晃

Kitamura, K., Itoh, H., Sakurai, K., Dan, S. and Inoue, M.*
Target Identification of Yaku'amide B and Its Two Distinct Activities against Mitochondrial FoF1-ATP Synthase.
J. Am. Chem. Soc. 140, 12189-12199 DOI: 10.1021/jacs.8b07339 (2018).

https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jacs.8b07339


ヤクアミドBは、通常のペプチドとは異なり4つの , -不飽和アミノ酸を有する複雑構造ペプチド系天然物です。本化合物は、複数のがん細胞系列に対して既存の抗がん薬とは異なるパターンで極めて顕著な増殖抑制活性を示すため、新たな抗がん薬シーズとして期待されていますが、その作用機構はこれまで一切明らかになっていませんでした。
我々は、ヤクアミドBを化学的に構築する全合成法を応用し、ヤクアミドB誘導体群の合成とこれらを用いた標的タンパク質同定を試みました。その結果、本化合物は細胞内でミトコンドリアに集積し、 FoF1-ATP合成酵素に対して結合することを世界で初めて明らかにしました。さらに、本分子の FoF1-ATP合成酵素に対する作用を解析することで、ヤクアミドBが FoF1-ATP合成酵素によるATP産生を抑制する上、同酵素による逆反応であるATP加水分解を亢進することを初めて見出しました(図1)。このような作用を示す化合物はヤクアミドBが初めての例であり、本研究によりヤクアミドBの示す特異な機能を利用した抗がん薬シーズ開発への展開が期待されます。


図1. ヤクアミドBのFoF1-ATP合成酵素に対する作用

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